―でもまあ、多少なりとも自分が許せる範囲で人にいい印象を与えようと してきたことが、けっこう積もり積もってストレスになったりとか、 そういうことはないですか。

氷室 あー、そうかもしれないね。でも自分がやったことだからさあ、ストレスとは ちょっと違うんだけどね。ずーっとほら、継続して動いているとわかんないんだよね、 自分が変わってる姿が。ビデオを見て初めてわかったりとかさ。 だから、自分の意識でやってるものと、客観的に俺がお客さんとして 見てたらどういう風に見えるかっていう、その見え方が違うなって感じたの。 俺がこういうつもりでやってるのが、他人が違う風に見るだけじゃなくて、 自分でさえも違う風に初めて見えたのね。それまでそんなことなかったから。 自分がやったとおりに、例えばそれをモニターで見ても、『あ、俺はあの時 ああやったからこういう風に見えるんだ』っていう風にさ。

―自分で納得して。

氷室 そうそうそう。

―それが初めて・・・・・。

氷室 うん。だから、これからBOφWYが変わるとしたら、なんか良い風に変わるか 悪い風に変わるか知らないけど、すごい変わるんじゃないかな、ステージとかも。

―それは単に、昔あった攻撃性みたいなものを、もう一度身にまとうって いうんじゃなくて。

氷室 うん、そういうことじゃ全然ない。もしかしたらさ、もっと本当に素直に 笑うことなのかもしれない。何にもなしにさ。別に今まで笑おうと努力して 笑ってるんじゃないんだけど。笑ってるんだけどね、うん。・・・・・なんか わかんないよね（笑）。

―いや、わかりますよ。

氷室 わかる？で、あとはさ、今までだったらインタヴューでもさ、そのインタヴューで 喋っている自分をいつもどっかで計算してると思うのね。それもなんか、 バカらしくていやなのね、もう。俺は普通の人なんだっていうさ、うん。 ・・・・・それを見詰め直せたのも、やっぱ・・・・・。ロンドンに行く前って すごかったんだ、街歩くとほら、子供たちが来るじゃん？ それがロンドンにポンといて、氷室京介じゃなくてテ×××××ムとして生きてきた バック・ボーンが見えて。それがどういう風に生きてきたかっていったら、 ここ何ヶ月とか1年とかさ、氷室京介って忙しすぎて、テ×××××ムじゃなくなってるんだよ。

―なるほどね。

氷室 それってなんか、俺、やなのね。すごくやだなと思ってさ。氷室京介は テ×××××ムじゃなきゃヤバイもんね。絶対ね。

―じゃあ、そこでのバランスがけっこう保てなくなっちゃったんですか。 氷室京介はテ×××××ムがいて、初めてできるものなのに、どんどん氷室京介がテ×××××ムの方に侵食してきて・・・・・。

氷室 そう。うん、それピッタリだと思う。だってけっこう、寝る時間以外ずっと氷室京介 なんだもん、変な話だけど。表に出るとさ、俺はテ×××××ムだと思ってても、 みんなは氷室京介だと思って見てるわけじゃん。それがけっこう重荷でさ。 そこでよしゃいいのにバカだからカッコつけるわけじゃん。人が見てるなと思うと カッコつけちゃうんだよ（笑）、どうしても。それがもう、たまんなくて。 疲れるよね、やっぱカッコつけるとさ。それをどこまでテ×××××ムに 戻せるかっつうのも、たぶんさ、100パーセント戻すのは無理なんだろうけど、 なるべくそんなに無理して人の目を気にするのはやめようと思ってさ。 こう、喋っててもテ×××××ムっていうのが出るじゃん？そうすると、 また面倒臭いなとかさ、思ったりするのね。戸籍で家調べて俺のウチまで 来たりとかさ、ウチの生ゴミ持ってたりとかするバカいるからさ。 それにイタズラ電話でしょ？クソかって思うよね。人に笑われるために やってるんじゃないからね。なんか、BOφWYの曲を聞いて楽しんでもらったり、 カッコいいなと思ってもらったりとかさ、そういうつもりでやってんのに・・・・・ なんか、すげえ色物的な風に自分がどんどん・・・・・。売れるってそういうことなのかも しれないけど、だったら俺、売れたくないもん。金なんか、本当に正直にほしくないもん。 そりゃ、一文無しになっちゃうのはやだよ。でも、カミさんと2人で食ってけて、 適当に友達とちゃんとした付き合いができて・・・・・その方がいいもん。 だからサクセス・ストーリーなんて・・・俺、前からこれは言ってたけど・・・ 本当に全然興味ないし、だからなんなのって話だよね。たまたま運がいいだけかも しれないしさ。それより人間らしい方が、俺は全然カッコいい人だなと思うし。